スローモション

自分が会社に入って最初についた直属上司は「結婚できない男」を地で行くような、「社内一細かい男」と評される頑固で完璧主義な人でした。文書作成時に10回以上書き直しを命じられるのなんて、当たり前。部長から「自分で配属しておいて聞くのもアレだけど、ぶっちゃけ上司として彼どうよ? 部下としては非常に優秀だけども」と心配されちゃうほど。

まあ、確かに細かいっちゃ細かいけど、言ってることはいつだって正論だし、納得行くまで何度でも校正に付き合ってくれるって気力も労力も必要だし、とても面倒見いいと思いますよ。と答えたら、意外そうな顔をされました。

まだ新人のうちに盲腸炎を患った自分は、手術のため1週間ほど入院しました。医者に「退院したらすぐ会社行けますか?」と訊ねたら、「行けるならどうぞ」。実際のところは「行けるもんなら行ってみな」って意味だったらしいのですが、純真だった自分は言葉通り受け取って翌日から出社しちゃいました(ただのあほ)。でも、まだ体力ないし、手術痕も痛いし、思うようには動けません。歩くスピードも、本人必死で頑張ってものんびりペース。なのに社外の打ち合わせに出席するため、結構な距離を歩く羽目になったり。

そのとき一緒に打ち合わせに出席した人たちのうち、直属上司だけは自分の歩調に合わせて隣を歩いてくれました。そして、よく晴れた秋空を見上げながら、「たまにはこういう速度で歩くのも、いいもんだねぇ。いつもと町が違って見えるよね」。弱者になったときにだけ見えるモノってあるんだなぁ、と思いました。たぶんこの上司のこういうところは、自分以外の人には気づく機会がなかったんじゃないかしら。それまでも上司から細かいことを注意されてもあまり気になりませんでしたが、周囲から「よくあの人とうまくやっていけるねぇ」と感心されようとも、その後はさらに気にならなくなりました。

ところで、今回の手術の直前にDEから「がんばれ」とだけ書かれたメールが届きました。まだ職場だったけど、手術が始まった後に出しても遅いよなと思って出してくれたそうです。うれしかった。手術開始時間が予定より繰り上がったから、あれより1時間でも遅かったらメール見てなかったと思うよ。

2 thoughts on “スローモション

  1. 文面から察するに手術が無事に終わったようで、おめでとうございます。あまりご無理をされませんように。でも日記読みたい私って意地悪でしょうか^^;

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